研究概要 |
1.水流強度の簡易測定法:昨年度に引き続き試作した石膏球を水中に24時間懸垂した際の溶解減少量(Wg)と、電磁式水流計で求めた24時間平均値流量(Vcm/sec)との関係を調べた。石膏球をネットに入れて水流計の近傍に懸垂した際の回帰式は、V=0.295W+0.682(r=0.820,n=17,p=0.00006)となり、この方法で24時間でのWが3.3-16.3g(水流速度では1.1-5.1cm/sec)の範囲ならば、環境水の24時間平均流量を簡便に測定できることが分かった。 2.捕集量の水流強度による補正:試作したSep-Pakを捕集剤とした携帯サンプラーで測定した環境水中のbenzo (a) pyrene (BaP)の24時間平均濃度(BaP-TWA,ng/L)と、石膏球を併用したブルーレ-ヨン(BR)懸垂法で24時間に捕集されたBaP量(BaP-BR,ng/gBR)との対応を調べた。測定値そのままでの回帰式は(BaP-BR)=2.392(BaP-TWA)-0.691,(r=0.8486,n=21,p=0.00000)、BR-BaPを石膏重量減少量(W)で補正した値とでは(BaP-BR/W)=0.2198(BaP-TWA)-0.0391,(r=0.8740,n=21,p=0.00000)となってより相関が強くなった。このことはBR懸垂法での吸着回収量を、同時に懸垂した石膏の重量減少量で補正することにより、その水域での水流強度を表す時間平均値が算出できることを示している。すなわちBR懸垂法による測定値を、Wあるいは水流強度で補正した値(補正値)として表せば、異なる水域間での比較が可能になる。 3.海域における測定結果:工業地帯の水島港と汚染源から遠隔の牛窓海域で、石膏球を併用したBR懸垂法でBaPを測定した。24時間の懸垂で水島港では1.51-6.85ng/gBR、牛窓海域ではnd-2.85ng/gBRが回収された。この値をW (g)で補正すると、水島港では0.137-0.631ng/gBR/g石膏、牛窓水域ではnd-0.155ng/gBR/g石膏となった。補正値で比較しても、牛窓海域に比べて水島港の方がBaPによる汚染が進んでいると解釈できた。
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