研究概要 |
水環境中の多環芳香族変異原生物質をモニタリング手法の一つにブルーレ-ヨン(BR)懸垂法がある。本研究ではこの方法での測定値を水流強度による補正を試みた結果、定量性が向上することを確認した。 1)Benzo(a)pyrene(Bap)を標的物質として、BR懸垂法に対する水流の影響を実験的に検討した。BR懸垂法は水中のBapをモニターする上で極めて効率の良い方法であるが、強く撹拌すると吸着回収量は増大し、水流強度の影響が顕著であった。 2)水流強度の測定法は小松らが報告した石膏球溶解減少量測定法を応用した。石膏球を水中に24時間懸垂した際の減少量(wd)と、電磁式水流計で測定した水流速度の時間平均値との間にはよい相関が認められた。則ち石膏球をBR懸垂法に併用して測定した(wd)をそのまま用いて吸着回収量を補正しても、水流強度での補正と同等の結果が期待できる。 3)ペリスタルテイークポンプをバッテリ-で作動するように改造した携帯サンプラーを作成した。すなわち水中に侵した吸着素材(Sep-Pakc18)に持続通水して、Bapの時間平均値(TWA-Bap)を測定する手法である。この方法で環境水中からng/L程度のBap濃度が測定できた。 4)石膏球を併用したBR懸垂法で、環境水中から捕集されたBap量(BR-Bap)と溶解減少量(wd)を測定し、(BR-Bap)を(wd)で除して((BR-Bap)/(wd))を算出した。この値と(TWA-Bap)との関係を調べると、補正値では相関係数が0,856となり、補正なしに場合の0,818よりも相関性は向上した。また補正後の回帰式は(TWA-Bap)=6.5x(BR-BaP)/wdとなった。すなわち溶解減少量で補正すれば定量性が向上することを示している。 5)工業地帯の港湾と汚染源から遠い水域の2地点を選び、補正値を比較すると、前者は0.14-0.63ng/gBR/g石膏であり後者は0.16mg/gBR/g石膏以下であった。このことは前者の方が汚染が進んでいると解釈できた。
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