研究概要 |
1.本研究に先立って5年にわたる研究助成の結果、ウサギ摘出心の筋小胞体(SR)画分に付随する分子量約103,78,44.5および26.7キロダルトンの4種のポリペプチドが虚血・再灌流処理に伴って消長することを見いだし、昨年度からの助成においてはそれらを単離して同定することを研究目的とした。昨年度の助成により購入した電気泳動的分離装置(ATTO社、バイオフォーレシスIII)により、各種条件下で処理したウサギ摘出心のSR画分の当該ポリペプチドの分離を試みた。低分子量領域と高分子量領域のポリペプチドの分離にはそれぞれに至適な泳動条件があることが判明し、分離条件の設定に多大な時間を費やした。今後の問題点として、単離したポリペプチドが複数の混合物であることが否定できないが、一次構造の決定時のN末端分析により明確になると考えられる。2.温血灌流保存心モデルを開発する上で、心機能の保持に重要な要因としての冠灌流量におよぼす虚血再灌流処理の影響を調べた。Langendorff灌流装置を装着した摘出心の右房から拍出される灌流液の容量変化を測定すると、摘出心の状態に依存した一定の時間依存性が再現性よく観察された。また、冠灌流速度が約28ml/minを超えると心拍動が観察された。摘出心のSRやミオシンATPase活性と冠灌流量との関係に関する報告はないが、以上の事実から再灌流時間に依存して変化する冠灌流の絶対速度が心機能および細胞機能を決定することが示唆された。3.今冬の兵庫県南部地震で数多く経験されたCrush症候群と類似する疾患である急性動脈閉塞症の実験モデルとして、ラット下肢の虚血再灌流障害を昨年に引き続き調べた。その結果多核白血球(PMN)の活性に関連したミエロペルオキシダーゼ活性は血液再灌流によって増大し、PMNの浸潤による細胞壊死が骨格筋の虚血再灌流障害の主たる原因であることが示唆された。
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