研究概要 |
本年度は、感作マウスのリンパ球のサイトカイン分析がI型アレルギーを評価することに有用であることが前年度の研究で示唆されたので、さらに詳細に検討を行った。toluene diisocyanate(TDI)の2段階濃度溶液を連日5日間塗布し、感作マウスを作成した。塗布開始1、2週間目に、TDIに対する耳介肥厚試験による接触感作の感作成立の有無と、総IgE抗体レベルを検討するとともに、リンパ球におけるin vitroでのPHAによるIL-4,IL-2,IL-5およびIFN-γの誘導を行なった。その結果、総IgE抗体レベルは、量および期間依存的に上昇を示した。IL-2,IL-4, IFN-γのレベルは、1週間目に上昇し、2週間目では、IL-4のみが低下した。抗体産生とサイトカインとの関係では、IgE抗体とIL-4レベルとの間に強い正の相関がみられ、反対に、2週間目のI1-2産生とIgE抗体の間には、強い負の相関関係がみられた。耳介肥厚反応では、1、2週間目に有意な肥厚反応がみられ、 IFN-γとの間に有意な正の相関関係がみられた。従って、IgE産正の初期段階に密接に関わるIL-4が、in vivoの初期段階でIgEと相関関係がみられたこと、また、 IFN-γが耳介肥厚反応と相関がみられたことから、両サイトカインの分析が、即時型および遅延型アレルギーを惹起する感作性物質の評価に有用であることが示唆された。したがって、サイトカインの産生パターンから試験物質のアレルギータイプを予測し、我々の開発したモルモットを用いた許容濃度設定のための実験モデルに導入することによって一連の感作性評価法が一応整うことになった。 ヒトに対する呼吸器感作物質の分類のための感作物質としての定義付けと感作性の信頼度の基準設定の作業を進め、数種の感作性物質を選定し、それらが適切に評価されるか検討を行った。その結果、おおむね適切性が確認されたが、疫学的根拠の基準の見直しが問題点として残された。
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