岩手県農村部において約300名の中高年男女から24時間思い出し法による食事調査を行い、食品ごとの摂取重量に既報文献のセレン含有量をあてはめ、1日セレン摂取量および各食品ごとの寄与度を算出した。1日セレン摂取量の中での魚介類、卵類、穀類(米飯)の寄与度が大きく、これらの摂取頻度を中心とした簡便な食事調査票を作成中である。また、同フィールドにおいてボランティア20名に対し陰膳調査を行い、食品ごとに分別後、重量測定を行い、その一部をサンプリングした。各食品中のセレン含有量を測定するとともに、ホモジネート上清中のセレンの形態についても検討を加える予定である。生体内セレンの存在形態につき、ヒト血漿および尿、マウス肝および小腸ホモジネート上清につき、サイズ排除カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法による分子量ごとの成分の分離および遊動結合プラズマ質量分析(ICP-MS)法によるセレン濃度のモニターを直結させて行うシステム(HPLC-ICP-MS)を開発し、血漿では、セレンは4つのピークに分離され、高分子分画、分子量10万程度の分画、アルブミンとretention timeが一致する分画、および、低分子分画にそれぞれピークが認められた。マウスへの各種化学形セレンの投与実験では、絶食マウス(ICR系8週令)に対し、亜セレン酸(10μg/kg)を経口投与し、投与後20分で門脈血、小腸内容物、および小腸上皮組織を採取し、吸収直後のセレンの存在形態につき検討を行っている。また、ヒトにおいても、ボランティア8名に対し、12時間の絶食ののち規定食を摂取させ、食前および食後30分で採血を行い、HPLC-ICP-MS法による血漿中かセレンのクロマトパターンにどのような変化があるか検討中である。
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