研究概要 |
岐阜県T市の35歳以上住民全員を対象として実施された質問表調査(回収率92%)の男性回答者14,843名のうち生涯に20箱以上の喫煙経験がある12,238名(82%)から200名を無作為に抽出した。30名の看護婦に対して合計6時間の面接者訓練(講義、ビデオ供覧、グループ・個人演習)を行ない、面接者が対象者の自宅を訪問してWHO統合国際診断面接(CIDI)日本語版を含む20〜40分の面接を実施した。面接結果をもとに、専用のコンピュータプログラム(WHO,1992)によってタバコ依存症のICD10診断を行なった。本面接の再面接法による評価者間の一致率は、各症状に対して80〜100%(k係数、0.54〜1.00)、タバコ依存症の診断に対して100%(k係数、1.00)であった。喫煙経験者中のタバコ依存症の割合は43.5%(現在喫煙者中では48.0%、過去喫煙者中では36.8%)であった。20本以上の1日喫煙本数、1本のたばこを3/4以上喫煙、20年以上の喫煙歴および家族歴がある場合にタバコ依存症の生涯有病率が有意に高かった。タバコ依存症の症状としては、1回以上の禁煙試行失敗(68%)、2回以上の禁煙不可能(55%)および禁煙時のタバコへの渇望(45%)が多かった。離脱症状では、イライラ(31%)、落ち着かない(31%)、集中困難(27%)が多かった。診断基準には含まれないが、喫煙問題のために生活に支障の生じた者は12%あった。わが国の男性住民では、タバコ依存症(ICD10診断)の生涯有病率は喫煙経験者中で43.5%、全男性住民中では35.7%(=43.5%×喫煙経験率0.82)と推定された。危険因子の解析およびスクリーニング法の開発は平成7年度に行なう予定である。
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