研究概要 |
平成4年6月に大阪府I市に在住する60歳以上のすべての者16,394人を対象として調査を実施し、16,155人(98.5%)から回答を得た。この中で、「健康であり、たいした病気や障害がなく、日常生活を普通に行っている者」は8,967人いた。これらの健康老人を対象として平成7年12月31日までフォロアップ調査を実施した。その結果、転出296人、死亡349人、把握できた入院・入所16人であった。この間に保健福祉サービスの利用にいたった要援護者は72人であった。 転出者については、死亡や身体状況の情報を得ることができなかったため、転出者を除く8,671人を対象として以下の分析を行った。この間の心身機能が低下した者を死亡者、入院・入所者、保健福祉サービス利用者とした。このような心身機能低下者は427人であった。心身機能低下に影響する要因を検討するために、従属変数を心身機能低下の有無とし、独立変数を性別、年齢、前年の健診受診の有無、生きがいの有無、ボランティア活動参加の有無、主観的健康観の有無、受診状況の有無、配偶者の有無、仕事の有無としたロジスティック回帰分析を行った。 分析の結果、心身機能の低下リスクについての有意であった変数およびそのオッズ比は、女0.44、前年に健診を受診した者0.61、生きがいがない者1.53、主観的に健康と判断している者0.62、医療機間に受診中の者1.27、配偶者がいる者0.36、仕事をしている者0.60であった。これらの結果から、健康な高齢者が、身体機能の低下にいたらないためには、健診を受診する、生きがいをもつ、主観的に健康と感じれる状況とする、配偶者とできる限りともに生活できるようにする、仕事をすることが重要であることが明らかになった。 つまり、高齢者が自立した生き方を獲得し、自立した生活を継続していくことと、健康診査を利用した健康管理が心身機能低下の予防に結びつくことが示唆された。
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