徳島県在住の農業従事者284名(30-70才)を対象に血液、尿検査を実施し、検査結果に異常のあった者を本研究の対象者から除外した。その結果、男性111名、女性126名が本研究の被検者として選ばれた。早朝、空腹時にヘパリン添加血液を採取、リンパ球分離培地上に重層、遠心することにより末梢血リンパ球(PBL)を得た。PBL機能としては^<51>CrラベルのK562細胞を標的細胞とするNK活性並びにPHA、ConAに対する幼若化能を測定した。NK活性は男女とも加齢による影響はほとんどみられず、60才代においても30才代とほぼ同程度のNK活性(32.4±10.2%)を保持していた。しかし、PBLのPHA及びConAに対する幼若化能は加齢に伴い低下する傾向を認め、その傾向は女性より男性において顕著であった。また、BMIを指標として被検者を20-25までのコントロール群と30以上の肥満者群とに分けた場合、加齢による影響をほとんど認めなかったNK活性も30才代の男女ではコントロール群に比し肥満者群のほうがむしろ高いNK活性を保持していたが、60才代の男性では逆に肥満者群においてNK活性の著明な低下を認めた。一方、女性では加齢や肥満によってもほとんど若齢時と同程度のNK活性を保持していた。また、PBLのPHAに対する幼若化能は60才代の男女において肥満者群において著明に低下することを認め、宿主免疫能を指標とした本研究からも高齢者における健康阻害因子の一つとして肥満が示唆された。さらに、肥満の成因として考えられる摂取エネルギーの増大と消費エネルギーの減少を肥満者群において認めた。以上、初年度に計画された内容はほぼ達成でき、その他に栄養学的抗老化因子としてはビタミンD及びEが指摘されたが、この点については次年度、動物実験により追試を行う予定である。
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