平成8年度における研究成果は以下の如くであります。 1.胸腺でのT細胞の分化・成熟とビタミンE 対照食(50 IU VE/kg diet)の10倍量のビタミンEを含む高ビタミンE食にて、6週齢のF344ラットを7週間飼育することにより、胸腺中のCD4_+CD8_-およびCD4_-CD8_+T細胞率の上昇を認め、中でもCD4_+CD8_-T細胞率の上昇は顕著であった。この機序として、T細胞増殖因子であるIL2の上昇と免疫系に対して抑制的に働くPGE_2産生の低下を見出すとともに、胸腺皮質上皮細胞(TEC)機能の上昇を認めている。中でも、TECと未熟(CD4_-CD8_+)T細胞との結合が高ビタミンE食投与により上昇することを見出している。さらに、その機序としてTEC膜上への接着分子ICAM-1の発現を認めている。しかし、一方胸腺皮質と髄質境界域に局在するマクロファージ機能(Negative selection)に関しては高ビタミンE食投与の影響はほとんどみられなかった。以上のことから、高ビタミンE食投与に伴う胸腺でのT細胞の分化・成熟の上昇は胸腺皮質上皮細胞(TEC)機能の上昇と髄質におけるIL2あるいはPGE_2を介した成熟T細胞の増殖促進によることが示唆された。 2.加齢に伴う細胞性免疫能の低下とビタミンE 若齢時から高ビタミンE食にてラットを約1年間飼育することにより、加齢に伴う細胞性免疫能、中でもSplenocytesの幼若化能低下に対する高ビタミンE食投与の影響について検討した。その結果、高ビタミンE食投与により加齢に伴うリンパ球幼若化能の低下が若齢ラットと同程度までに改善されることを見出し、それが、マクロファージ機能の改善やリンパ球のマイトジェンに対する感受性の上昇と関連することを認めている。また、運動トレーニングによっても加齢に伴う細胞性免疫能の低下が改善されることを見出した。
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