本研究では過去5年間にわたって、約1800名の地域在住老年者に対して、以下の検索を実施してきた。 (1)65歳以上の老年者(アンケート調査) 1)日常生活動作:8項目(歩行、階段、食事、更衣、排便、入浴、整容、服薬) 2)身体情報機能:8項目:(視覚、聴覚、会話、記憶、電話、睡眠、昼寝、転倒) 3)社会的状況:7項目(経済状態、結婚、同居形態、家族関係、集団行動など) 4)老年者のうつ尺度:7項目(Geriatric Depression Scale) 5)QOL調査(Visual Analogue Scaleによる主観的健康度、幸福度) (2)75歳以上の老年者(計12回にわけ、以下の事項について実際に検診を実施した。 1)血圧(座位、臥位、立位) 2)神経行動機能評価(言語性記憶、構成行為、視空間認知能力、反射神経、手指の巧緻運動、歩行の安定度・俊敏性などを評価) 3)心電図、血液生化学、医学的診察 (3)年間を通じて、これら対象者に変化(疾病、入院、死亡、その他)あるときは、町の保健婦ならびに健康推進委員から報告がもたらされ、前後の詳しい事情を聴取のうえ、コンピュータに記録している。 91年度から96年度の推移を縦断的に検討した結果、地域在住老年者におけるADL自立度は経年的に増加しており、community-based interventionの有用性が示唆された。また、血圧値と将来の認知機能とのあいだにJ-curve現象が認められること、コレステロールが低い老年者のほうが認知機能の系年的低下が早いことなどが明らかとなった。 以上の結果から、本縦断的研究は、今後も継続して実施する必要があると考えられる。
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