本邦学童における、社会・経済学的に有効な高脂血症児スクリーニング法を検討する目的で、特定地域(福岡県粕屋郡久山町)在住の小学1年生から中学3年生(6歳〜14歳)までの児童・生徒を対象に、早朝空腹時の総コレステロール(TC)、中性脂肪(TG)、HDL-コレステロール(HDL)を測定した。さらに両親・祖父母のPremature cardiovascular disease;CVD(虚血性心疾患;狭心症、心筋梗塞、および脳卒中)の家族歴の有無をアンケート法にて調査した。 その結果、全対象902名中、小学1〜3年生の14%(37名)、同4〜6年生の16%(47名)中学1〜3年生の14%(48名)がCVDの家族歴を有していた。これら家族歴を有する児童・生徒のうち、小学1〜3年生8名(8/37;22%)、同4〜6年生9名(9/47;19%)、中学1〜3年生4名(4/48;8%)が、TC≧200mg/dl、TG≧160mg/dl、LDL-コレステロール(LDL)=TC-(HDL+TG/5)≧130mg/dl、HDL≦40mg/dl、AI;atherogenic index=(TC-HDL)/HDL≧3.0の5項目のうち1項目以上の脂質値異常を有していることが明かになった。一方、CVDの家族歴を有しない小学1〜3年生の28%、同4〜6年生の20%、中学1〜3年生の7%が同様の脂質値異常を有していた。したがって同地域におけるCVDの家族歴に基づく選択的脂質スクリーニング法のspecificityは82%、sensitivityは16%ということになる。 これらの結果から、本邦における、CVDの家族歴の有無に基づく高脂血症児のスクリーニングにはとくに経済効率上の問題が大きいことが考えられる。しかし、全般的スクリーニングについても同様の問題が指摘されており、測定項目、検診年齢、検診回数を含めて更に検討が必要である。
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