研究概要 |
1994年6月に京都府北部の農業と林業を主体とする久美浜町において1994年5月から約1か月かけて、アンケート用紙を保健委員を通じて配付した。3,269人の高齢者のうち3,132人から回答を得た。回答は在宅老人からのものであり、同町にある特別養護老人ホーム(定数50)入所者は対象にしていないので、在宅者に限定すれば、100%近い回答率になる。これらの結果をコンピュータに入力し、分析した。その結果、痴呆の確実なもの(D群)、その疑いのあるもの(S群)、痴呆ではないもの(N群)、が区別できた。かれらのうち76%、2,280人が直接診察に応じたので、これらから無作為抽出し、1994年8月から1995年8月まで1年かけて直接診察をおこなった。診察は痴呆の診断に十分な経験を有する神経内科専門医によりなされ、痴呆の診断基準はDSMIII-Rに則った。Hachinski Ischemic Scoreを用いてアルツハイマー型痴呆と脳血管性痴呆の鑑別をおこなった。結局アンケート上D群とされたもの163人中24人を直接診察することができ、うち3人が痴呆と診断された。従って推定痴呆数はD群からは163×3/24=20.4となった。同様にS群からは272×9/82=29.6、N群からは1,845×3/92=59が得られた。従って同町における65歳以上の在宅老人の痴呆の有病率は(20.4+29.6+59)/2,280=0.048すなわち4.8%と推定された。なおHachinski Score 7点以上の脳血管性痴呆と考えられる者は3人、2点以下は11人であった(1人は6点)。わが国では痴呆の有病率は65歳以上の老人で4から6%といわれており、そのうち、60から70%が脳血管性とされている。有病率に関しては全国平均とほぼ同じ値が得られたが、アルツハイマー型痴呆が明らかに多いことになった。これは麻痺等により動くことができない在宅高齢者が本調査では脱落した可能性や、老人ホーム入所者が対象から除外されていることも考えられ、さらなる調査が必要と考えている。
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