昨年度はAIDS/HIVに関する知識および認識についての各種調査とその評価を主として学生および各種学校を対象として行ったが、本年度はその対象を職域に求めた。血液凝固因子製剤受注例を除いたAIDS患者およびHIV感染者の年次別報告数は、日本人男性においては爆発的増加はないものの漸増傾向が続いており、AIDS患者の年齢別ピークは40歳代に、またHIV感染者のピークは30歳代に存在する。米国では、25〜44歳の男性の死因の第1位が1992年以降AIDSであるという現実とも併せ、この年齢層の知識・認識および鼓動調査が重要であるという背景が存在するものと考えられる。 知識面に関するアンケート調査では、社会人の場合、スクリーニング検査である抗HIV抗体検査の適切な検査時期(正解率47.8%)、日和見感染症の存在(59.4%)、治療薬剤の状況(27.5%)、母子感染の確率(36.2%)などに関する設問に対する正解率が大学生に比べて有意に低く、AIDS/HIVの予防に関する教育や情報を得る機会が少ないことが示唆された。 また、会社の人事部門などAIDS問題を取扱う担当者を主として対象とした、HIV感染症例が出現したときの対応については、マニュアルなど対策を成文化している企業は依然として少なく、個人の健康情報の管理・プライバシー保護に関しては、企業全体の対策の遅れと企業間の格差が認められた。新人および管理職教育におけるAIDS/HIV予防教育の導入と継続の重要性が具体的な事例を通じて再認識されたものと考えられる。今後は、職域を対象とした教育の重要性の啓発、適切な教育キットの開発が重要な課題であると考えられた。
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