本研究の目的は、各種集団を対象としてAIDS/HIVに関する詳細な調査を行い得られた結果を解析することにより、どのような点に知識・認識の不足があるかを明らかにし、教育法として改善すべき点を検討し、対象に応じた適切な教育手法を考察することであった。今回の調査結果を考察すると、わが国の場合、各種エイズ予防教育が試みられているにも拘わらず、その教育効果が上がっていない点がある程度明らかになったものと考えられる。性教育を含めた予防教育は少なくとも中学校で正しく伝えられるべきものと考えられるが、調査対象は限られていたが高校での講義の有無がその後の知識に結びつかないことは、学校におけるエイズ予防教育の質と量について再検討すべき課題があることを示したものと考える。持続的で繰り返しを含めた教育が大切であることは、諸外国の研究者が多く指摘するところである。職域においては、AIDS/HIVの問題は、個人と会社の関係、職域とくに単一健康保険組合における個人の健康情報がどの程度守られているか、あるいは職域における人権の問題などを最も典型的に問いかける問題であり、この問題に対処する能力を有することは他の問題の解決にもたいへん有効であると考えている。社内の研修においてエイズ教育に割け得る時間は限られており、エイズの各種問題を教育し得る専門家の数も限られている。従って今後は適切な教育キットの開発が重要な問題になってくるものと考えている。特にわが国の場合、視聴覚教育については高度の専門的技術を有しており、この点は、今後世界で最も患者・感染者の増加が見込まれるアジア地域においてもわが国の専門家に期待されている点であると考えている。
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