ラットと兎を-20℃の冷凍庫内に入れ実験的凍死のモデルを作成し、その間の呼吸、循環の経過を観察したところ次の結果を得た。 (1)ラットでは正常の直腸温は35℃前後である。体温冷却と共に心拍数は当初毎分350位から一時的に400位になるが、その後は減少し、体温13℃あたりで心拍数は0となった。心電図所見は体温25℃前後で、脚ブロック、15℃前後で心室性期外収縮頻発し、13℃位では心停止した。呼吸数は1分間150位から体温下降と共に徐々に減少し体温18℃前後で停止した。 (2)兎では心拍数、心電図所見、呼吸数共、ラットと同様の過程を示したが、体温20℃前後で心室細動が頻発するようになり、18℃位で停止した。呼吸は20℃位で停止した。 以上のことから、動物では種類によって多少異なるものの、心停止が来るのは体温17〜13℃、呼吸停止が来るのは20〜17℃で、ヒトで予想されている体温28℃前後での心室細動は全く認められなかった。このことからヒトでも場合によっては寒冷に対してはかなり抵抗力があることが示唆され、体温17℃とか15℃からの生存もあることが示唆された。次に心筋および血清中のクレアチンフォスホキナーゼ活性の定量を行ったところ、心筋では減少し、血清では増加し、また、心筋ミオグロビン染色を行ったところミオグロビンの減少が確認され、凍死の際には寒冷による心筋細胞の障害が示唆された。そして、こような結果を用いれば、凍死の診断にも役立てられるとの結論を得た。
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