研究概要 |
心臓性突然死、特に虚血性心疾患の早期診断法の確立のために、基礎的研究として成熟ラット単離心筋細胞を用いて、これを酸素欠乏状態にした時の形態的、生化学的な変化の検討を行った。単離心筋細胞を95% N2,5% CO_2混合ガスに暴露した環境下で、より虚血状態に近づけるためにglucose-free Krebs-Ringer液を培養液として用い短時間の観察を行った(Po_2:20mmHg)。細胞は、短縮、膨化し、4時間以内にブレブを形成し横紋の消失する細胞が見られた。また、CPKも酸素欠乏により細胞外への逸脱が増加した。更に、長時間の酸素欠乏状態が心筋細胞に対してどの様な障害、またそれに続く不可逆的な障害、即ち、細胞死を引き起こすかを検討した。培養液をDMEM-F12或いはM199に交換して、95% N2,5% CO_2混合ガスに暴露した環境下で22,46時間の観察を行った。形態的変化は、短時間の酸素欠乏状態で見られたものと同様でその程度は46時間で著明であった。また、逸脱するCPKも多く検出された。更に、細胞からDNAを抽出し、アガロース電気泳動でDNAの障害の程度を観察した。酸素欠乏の時間に応じて泳動パターンは、smear状から加えて約180bp倍数単位のDNAfragmentationが観察され、酸素欠乏による細胞死は、壊死とアポトーシスが混在して生ずることが示唆された。以上の結果より、虚血性心疾患の早期診断には今回観察された種々の形態変化並びにアポトーシス像を病理組織所見に見出すことがその診断を可能にすることが示唆された。
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