研究概要 |
Dot-immunobindingassayの変法による微量血痕および斑痕からの血液検査を行うため,唾液,血清などの体液に含まれるABO式,Lewis式血液型抗原の定量を試みた.免疫反応の固相にはラテックス粒子を用い,金コロイド標識血液型抗体を反応させ,赤く染まったラテックス粒子をフィルターに載せてレーザー光熱変換偏向分光(OBD)法で測定した.この結果,ABO式,Lewis式血液型抗原は従来のアビジン-ビオチン系を用いたELISA法より2桁高感度に測定できた.特に,血清中のLewis式血液型抗原量は唾液の1/(10)以下の含量にも関わらず,高感度に測定できた.また,血清中のLe^a,Le^bの抗原量を定量して,大腸癌患者と健常者の区別が明確にできるという知見を得た.OBD式による測定は血液型抗原の微量定量に充分な感度で,血痕,斑痕からの血液型検査に関しては測定法が確立できた.また血清中のLewis式血液型抗原の測定は個人識別や臨床検査への応用が期待できると思われる.本研究は,レーザー分光による着色物質の測定が特色である.このため発色物質の選定は最も重要な課題であったが,金コロイドは強いレーザー光に対して長期にわたって安定でき,大きい吸光係数を持つので,抗体の修飾には最も適していることが分かった.さらに,高感度な検出には重要なシグナル/ノイズ比を考えると,バックグラウンドを下げるためには,免疫反応固相としてラテックス粒子のような素材が適していることがわかった.このような免疫反応系の分離にCapillary zone electrophoresis(CZE)を応用して,反応の迅速化と簡便化を検討中である.また血清,尿などに含まれるコカイン,モルヒネなどの薬物の免疫学的な検出を目的とし,CZEによる分離,検出の基本的な検討を行った.CZEの高感度な検出法ととしてはOBD法と同様な原理に基づく光熱変換効果を用いた測定法の研究を行っている.
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