研究概要 |
平成6年度の研究計画に従い,全身性エリテマトーデス(SLE)におけるFas抗原発現異常の解析とSLE病態との関係並びにFas抗原の機能的解析を行った.更に,Fas抗原の発現調節機構を解明するために,c-fosトランスジェニックマウスを利用した解析も行った. 1.SLE患者末梢血では,健常人や慢性関節リウマチ患者とは異なり,ナイーブT細胞においてFas抗原が陽性であった.しかも,早期及び中期活性化抗原であるCD25やCD71も同時に発現する一方,HLA-DR抗原はほとんど発現されないことから,SLEのナイーブT細胞は比較的最近活性化されたことが明らかとなった.また,すでにFas抗原を発現しているメモリーT細胞もSLEではFas抗原の発現増強がみられた. 2.ナイーブ及びメモリーT細胞に発現増強したFas抗原がアポトーシスを誘導できるかどうかを調べるために,SLE及び健常人の末梢血単核細胞を抗Fas抗体と共に培養し,DNAの断片化と生存率を検索したが有意の差は見出せなかった. 3.SLEのT細胞におけるFas抗原の発現増強と臨床的パラメーターとの相関を解析すると,循環CD4陽性T細胞サブセットの絶対数とFas抗原密度に有意の逆相関を認めた.生体内ではFas抗原密度の増強がアポトーシス感受性を亢進させていると考えられたが,しかし,実際にFas抗原を介してアポトーシスによる細胞数減少かどうかは不明であった. 4.Fas抗原の発現調節機構を解析するために,転写因子の一つであるc-fosを構成的に発現させたトランスジェニックマウスを解析した.c-fosマウスでは,Fas抗原mRNAの発現が増強しており,Fos/Jun複合体(AP-1)がFas抗原の発現調節に関与していることがわかった. 5.SLEの末梢血単核細胞におけるFas抗原mRNAの解析中に,模型Fas抗原とは異なる分泌型Fas抗原mRNAの存在を見出した.SLEでは分泌型Fas抗原mRNA/模型Fas抗原mRNA比が上昇していた.実際に,SLE血清中には可溶性Fas抗原が有意に増加しており,免疫応答局所では可溶性Fas抗原によるFas抗原とFasリガンドの結合抑制が示唆された.
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