研究概要 |
平成7年度の研究計画に従い,全身性エリテマトーデス(SLE)における可溶性Fas(sFas)の発現解析を行い,その臨床的ならびに免疫学的意義を検討した. 1.血清中sFasの測定法として,Fas細胞外ドメインの異なるエピトープを認識する抗Fasモノクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA(sELISA)法を開発した.また,sFasが膜貫通部分を欠失した分泌型Fas遺伝子産物かどうかを検討するために,FasのC末端ペプチドに対して作製したポリクローナル抗体も検出抗体として使用した. 2.SLEでは血清中sFasレベルが健常人や他の自己免疫疾患より有意に上昇していた.しかも,SLE疾患活動性指数(SLEDAI)の高い活動期症例において有意にsFasが増加していた.臨床的パラメーターとの相関では,sFasレベルと白血球数や補体価と負の相関が,また,抗DNA抗体価やSLEDAIと正の相関がみられた.同一SLE症例においては,ステロイド治療による臨床的改善と共に,sFasレベルの減少が認められた.以上より,sFasはSLE活動性を評価する新たなパラメーターとなりうることがわかった. 3.SLE血清中のsFasは大部分が分泌型Fas遺伝子産物と考えられたが,約20%の症例においてC末端部のないsFasのみが検出され,膜型Fasの細胞外ドメイン遊離型と推定された. SLEの末梢血単核細胞における模型および分泌型Fas遺伝子発現を解析するために,半定量的RT-PCR法を開発した.SLEにおけるそれぞれのFas遺伝子発現レベルは,上昇傾向を示すものの,健常人と有意の差はなかった.しかし,膜型と分泌型Fas遺伝子発現の相関は,健常人では極めて強い正の相関を示したが,SLEでは相関が認められず,Fas遺伝子の発現制御機構の変調が明らかとなった. 5.sFasの免疫学的普遍性を解析するために,マウスおよびラットのFas遺伝子発現を検索したところ,ラットにおいてもヒトと同様な選択的スプライシングにより分泌型Fas遺伝子が発現していた.この結果,自己免疫疾患動物モデルにおいても,sFasの免疫学的意義を解析することが可能となった.
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