1)ウエスターンブロット法によるプロテインキナーゼC(PKC)アイソフォーム蛋白発現量の測定系を確立した。ラビット抗PKCα、β、δ、ε及びζの5種類の抗体を用いて各種細胞における各アイソフォーム蛋白の発現の有無の検討が可能となった。 2)マウスPKCη、θおよびλに対してそれぞれ特異的なポリメラーゼチェインリアクション(PCR)プライマーを作製した。これらのPCRプライマーをもちいてマウスpreB細胞である70z/3細胞から抽出したmRNAを逆転写して作製したcDNAをテンプレートとしたPCRをおこなったところ、PKCθおよびλに予想されたサイズのバンドが検出された。これらのバンドのDNA配列を決定したところ、実際にアイソフォーム特異的なPKC産物であることが確認された。各種リンパ系細胞におけるこれらのアイソフォームの発現に関してはこれまでほとんど報告がみられず興味がもたれる。 3)PKCδcDNAを哺乳動物細胞用発現ベクターへの挿入した過剰発現系の作製を開始した。PREP7ベクターにPKCδcDNAを挿入したベクターを作成し、ヒトJurkat細胞、マウス70z/3及びWEHI231細胞に導入した。ハイグロマイシンにて選択し変異細胞株を得たが、予想に反し、PKCδ蛋白の過剰発現は確認できなかった。この原因について現在検討中である。 4)本研究と関連して、同様の手法を用い、ヒトリンパ系細胞におけるソマトスタチンレセプター(SSTR2)のサブタイプの発現が細胞種により異なることが明らかとなった。細胞株ではSSTR2の発現が多く、リンパ系白血病細胞でも同様であったが、正常末梢血リンパ系細胞ではSSTR2の発現はほとんど見られなかった。この結果はSSTR2がヒトリンパ系細胞の分化、活性化に何らかの役割を果たしていることを示唆しており、今後興味深い課題となると思われた。
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