研究概要 |
第一に、ヒト精製白血球分画における5-Lipoxygenase mRNAの発現レベルをPCR法によって半定量する条件について検討した。ヒト5-Lipoxygenase cDNA配列をもとに、センスオリゴマー、アンチセンスオリゴマーを合成し、プライマーとして使用した。ヒト全血よりグルコース・デキストラン法にて白血球分画を精製し、インビトロジェン社のMicro Fast Track mRNA purification kitによりmRNAを抽出し、逆転写反応を行いcDNAとし、テンプレートに用いた。プライマーのアニールに適する温度を30サイクルのPCRにて検討した結果、54℃近辺が適当であった。このアニール温度にてPCRによる増幅がプラトーに達するサイクルを検討したところ、8〜20サイクルの間では急峻に増幅が進み、24サイクル前後で飽和することを観察した。以上の結果より、アニール温度54℃にて20サイクルのPCRを行うことで、5-LipoxygenaseのmRNA発現レベルを半定量できるとこが判明した。 次に、精製したヒト白血球をカルシウムイオノフォアで刺激し、5-Lipoxygenase mRNAレベルを上記の方法で検討した。コントロールとして同様の方法で検出したβアクチンのmRNAレベルを使用し、デンシトメーターによる前者の検出値を後者の検出値で補正したところ、0分から45分まで5-Lipoxygenase mRNA発現レベルは一方的に増加していることが判明した。さらに好塩基球に特異的な反応性をみるために抗ヒトIgE抗体を用いた刺激を行い、同様の検討を行ったところ、20〜45分にかけて5-Lipoxygenase mRNAレベルが増大することが観察された。このことより、アトピー型気管支喘息において、アレルゲン吸入後にIgEを介した反応がおこり、アラキドン酸よりロイコトリエンC_4,D_4,E_4が作られる過程で、その合成過程に重要な5-Lipoxygenase mRNAの発現増加が示唆され、喘息患者では白血球5-Lipoxygenase mRNAの量的異常がおこっているものと思われた。
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