研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)および対照とした非炎症性関節炎である変形性関節症(OA)の患者より血清、関節液のIL-10蛋白をELISAにより測定し,RAでは血清、関節液ともに,OAに比較して数十倍のレベルで増加していることを明らかにした。関節液中のIL-10は、炎症性サイトカインであるIL-1およびTNF-αレベルと有意な相関を認めた。また半定量的RT-PCR法による検討では,RA滑膜病変部では,OAに比較しIL-10が転写レベルでも強く発現していた.RA滑膜より分離した細胞は、培養においてIL-10の蛋白レベルでの産生も認めた.RAおよびOAの免疫組織染色により,RAでは主な産生細胞は、滑膜表層と表層下transitional areaに分布し、リンパ濾胞部には認めなかった。分画化した滑膜細胞と継代化した線維芽細胞のmRNA、蛋白の発現の検討からは、浸潤したマクロファージが主要なIL-10産生細胞と考えられた.RAの主な増殖性細胞である線維芽細胞の増殖,IL-6,IL-8の産生におよぼすIL-10の影響について検討を行なったが,IL-10は増殖、サイトカインの産生には有意な作用を認めず,IL-10とともに抗炎症性サイトカインであるIL-4とは異なった作用を持つことが明らかとなった。さらに、滑膜細胞にIL-10または抗IL-10抗体用いた培養予備実験で、IL-1,TWF-α、IL-8、INF-γなどのサイトカイン産生を抑制し,RA滑膜のサイトカイン・ネットワークを抑制する主要な因子であることが示唆された。
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