研究概要 |
ヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)は、1990年に初めて分離された新しいT-lymphotropic virusである。我々は最近、HHV-7はCD4陽性T細胞に選択的に感染し、感染細胞は表面CD4の発現量が低下し、著しい機能不全に陥ることを見出した(J.lmmunol.152:5768,1994)。このような現象は、CD4を感染レセプターとするHIV-1においても認められることから、HHV-7の感染レセプターもCD4であるとの仮説を立て、以下の方法で検証した。まず、種々の抗CD4モノクローナル抗体添加によるHHV-7増殖抑制を検討したところ、全ての抗CD4抗体がHHV-7増殖を抑制した。リコンビナントHIV-1gp120もHHV-7の増殖を抑制することが判明した。次に、CD4陽性T細胞に、細胞表面CD4発現を抑制することが知られているガングリオシドGM1およびフォルボールエステルTPAを処理し、HHV-7を接種したところ増殖が著明に抑制された。最後に、CD4陽性T細胞に予めHIV-1を感染させておき、HHV-7を接種したところ、HHV-7の増殖はHIV-1非感染細胞の場合と比べて極めて微量であった。以上の結果は、CD4はHHV-7の主要な感染レセプターであり、HHV-7はCD4分子上でHIV-1と感染競合することを示している。異なった2種のウイルスが同一分子をレセプターとして共有することは現在までに報告がなく、新しい知見である。また、CD4分子に結合するHHV-7の分子構造を明らかにすることによって、HHV-7由来ペプチドによる新しいタイプのエイズ治療薬の開発が可能であることを示しており、現在その同定を急いでいる。
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