研究概要 |
HTL-V-l(human T-lymphotropic virus type I)キャリアでは、カリニ肺炎、サイトメガロウイルス感染症等の日和見感染症の報告があり、ATL(adult T-cell leukemia/lymphoma)発症のaccelerating factorとしての可能性が示唆されている。今回、細胞内寄生菌を用いて、HTL V-1キャリア及びATL患者の感染防御メカニズムとサイトカインの関連につき検討した。HTL V-1キャリア、ATL患者、HTL V-1抗体陰性コントロールの末梢血単核球を分離し、細胞内寄生菌であるレジオネラ菌を感染させた。その後の菌の細胞内増殖パターンを比較すると同時にサイトカイン(IFN-γ,TNF-α,IL-Iβ,IL-4)の産生を培養上清で測定した。キャリアからの単核球を単球、CD4陽性細胞、CD8陽性細胞に分離しサイトカイン産生を検討した。また培養系へ抗IFN-γ,TNF-α抗体を添加し、菌養殖に及ぼす効果をみた。HTL V-1キャリアでは、レジオネラ菌の単球内増殖が、ATL患者及びコントロールに比べ、著しく抑制されていた。キャリアではIFN-γ,TNF-αの産生が亢進しており、INN-γはCD4陽性細胞より、TNF-αは単球より分泌されていた。抗IFN-γ,TNF-α抗体添加により、キャリア単球内のレジオネラ菌増殖抑制は消失した。HTL V-1キャリアの大部分では、単球が活性化されており、ある種の細菌に対して感染防御に働いている可能性が示唆された。
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