研究課題
(目的・結果)ヒト 単球遊走因子(Human monocyte chemoattractant protein-1:hMCP-1)の転写調節機序にHTLV-1がコードするTaxの担う役割を解析した結果、1)hMCP-1の継続的発現が認められるA172 glioblastoma cell lineにTax発現ベクターを導入すると導入量に相関してhMCP-1のmessageの発現亢進が認められたが、Taxのdeletion mutantを導入したA172においてはhMCP-1のmessageの発現亢進を認めなかった。2)hMCP-1 κB siteを含むプロモーター領域およびCATレポーター遺伝子のキメラを、Tax発現ベクターとともにA172に導入すると、CAT活性の上昇を認めたが、κB siteにmutationを導入した場合、Taxのdeletion mutantを導入した場合はCAT活性の上昇を認めなかった。3)hMCP-1 κB siteをプローベにしたゲルシフトアッセイにて、Tax発現ベクターでトランスホームした細胞の核抽出液において、hMCP-1 κB siteへのNF-κBの結合亢進が認められた。1)-3)の結果より、TaxがNF-κBを活性化することによりhMCP-1の発現を亢進させることが示された。さらに、HAAPの間接滑膜細胞クローンのRNAを用いて半定量的RT-PCRによりhMCP-1の発現を検討した結果、Tax gene(+)の細胞に富むクローンにおいてhMCP-1の発現の亢進が認められた。(結論)TaxがNF-κBを活性化することによりhMCP-1の発現を亢進させることがはじめて示された。単球が慢性関節リウマチの病態形成に主要な役割を担っている点を考慮すると、cell lineさらには、慢性関節リウマチのモデルと考えられるHTLV-1 associated arthropathy(HAAP) HAAPの炎症性関節滑膜細胞を用いて、単球の遊走因子であるhMCP-1の転写調節機序が解析されたことは、今後、慢性関節リウマチの病態の把握、ひいては治療に大きく貢献するものと考える。
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