LAF-1やICAM-1などの接着分子に対する抗体を心移植時に同時に投与することによって、移植を永続させ得るとの報告がある。すなわち、抗接着分子抗体を用いることにより抗原特異的にトレランスを導入させることが可能となった。この方法によるトレランスの導入は移植免疫のみならず、異種蛋白に対する通常の液性抗体反応においても認められる。今回の目的はこの方法を応用して自己免疫疾患における自己抗体の産生を抑制し臓器障害の発生を予防することである。すなわち、SLE自然発症マウスの生後比較的早い時期に、臓器障害性が高く免疫原として重要なクロマチンを積極的に免疫すると同時に抗接着分子抗体を投与することによって、SLEにおいて自己抗体の産生が抑制されるかどうかを検討した。 モデル動物として、lprマウスとNZB/NZWF1マウスを用いた。生後1カ月齢のlprマウスに抗接着分子抗体を投与しても抗体産生量あるいは糸球体腎炎の程度に影響を与えなかった。そこで、生後より早期である2週令のlprマウスと2週令のNZB/NZWF1を対象として実験を行った。これらの場合においても、残念ながら、抗接着分子抗体の投与は自己抗体の産生量や臓器障害に対して保護的な効果を示さなかった。 SLEと異なり膵ラ氏島炎という臓器特異的な自己免疫疾患を自然に発症するNODマウスでは今回、ここで行った方法により疾患の発症が予防されたとの報告がある。臓器特異的自己免疫疾患とSLEのような全身性自己免疫疾患では、自己抗体の産生や臓器障害の機序に違いがあることが考えられた。
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