研究概要 |
RA及びOA患者各5例の人工関節置換術時に得られた生検滑膜組織より単離した滑膜細胞を用い血清依存性のB型滑膜細胞増殖を^3H-サイミジンの取り込みにより定量した。活性化ビタミンD_3は用量依存性に抑制を示し、10^<-7>Mで100%の抑制を認めた。。さらに滑膜細胞の非刺激時及びLPS(1μg/ml),IL-1(10ng/ml),腫瘍壊死因子α(10ng/ml)による刺激時のIL-6、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、コラーゲン(I型及びIII型)、TIMP(メタロプロテアーゼインヒビター)の産生をELISAで、コラゲナーゼの産生を蛍光法で定量した結果、活性化ビタミンD_3がIL-6,コラゲナーゼ産生は抑制するが、TIMP産生には影響せず、コラーゲン産生は増加させることを見いだした。 さらにビタミンD_3のメディエーターと考えられているC18/C2セラミドおよびHerbimycinなどのチロシンキナーゼ阻害剤及びチロシンホスファターゼ阻害剤(Orthovanadate)の作用検索したが滑膜細胞に対しては抑制効果はなかった。 滑膜細胞の増殖及び活性化の抑制を示す薬剤として活性化ビタミンD_3にその作用を認めた。これらの成果の一部は第38回日本リウマチ学会、第58回米国リウマチ学会において報告した。一方、cAMPアナログ(8-Cl-cAMP)にも滑膜増殖抑制効果が認められることよりプロテインキナーゼAの阻害剤による影響も調べて、活性化ビタミンD_3がいかなる情報伝達に関与しているかを明らかにする必要があると考えられた。さらにIL-6,コラゲナーゼに対する産生抑制作用が認められたことより当初の計画通り、滑膜細胞の核内の転写因子であるAP-1,NF-kB,CREBに対する作用をゲルシフト法により解析する必要性が考えらた。また、動物実験系の確立と共にSCIDマウスを用いたヒト滑膜細胞の増殖系を確立する今後の開発の課題である。
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