研究概要 |
平成六年度の実験ではいくつかの問題点が生じた。一つは、細胞株ILKM10を測定系に用いてきたが、二年間の培養中にILKM10が弱いIL-6への反応を示し始めた点であり、この点はさらに新たにILKM12を樹立し対応した。第二には骨髄腫細胞増殖因子としてIL-6以外にgp130レセプターに関連した増殖因子の関与を除外する必要性が生じ、これらの因子が骨髄腫細胞増殖因子であることを確認すると同時に目的とする因子がこれらの因子と異なることを確認した。結果としては下記の点を今年度の業績として報告する。 1)骨髄ストローマ細胞の存在下に培養維持可能であるが、IL-6単独では増殖維持できず、IL-6以外の増殖因子必要とする細胞株ILKM12を新たに樹立し、ILKM10とともにその性状を解析し、血液学会総会(94/4)にて報告した。2)両細胞株はストローマ細胞の存在下に増殖を示すが、その増殖は抗IL-6抗体、抗IL-6R抗体あるいは抗接着分子抗体ではほとんど抑制を受けなかった。3)ストローマ細胞の機能はストローマ細胞培養上清で代替可能であり、抗IL-6抗体または抗IL-6R抗体はほとんど培養上清の活性を抑制しなかった。4)骨髄スロトーマ細胞株を入手し、骨髄腫細胞増殖促進活性の産生を検討したが、満足な産生株は現在まで見い出しえていない。5)IL-6以外に、gp130-related cytokinesとしてOncostatin M,Leukemia Inhibitory Factor,IL-11,Ciliary Neurotropic Factorが骨髄腫細胞増殖因子であることが注目され、この点を樹立株すべてについて検討し、これらの因子が増殖促進作用を示すことを確認し、しかし、ストローマ細胞培養上清に含まれる因子はこれらの因子と異なることを臨床血液学会(94/11)で報告した。6)目的とする増殖因子を骨髄ストローマ細胞のprimary cultureより採取し、ホローファイバーを用いて濃縮し、ゲル濾過などの精製を施工中し、IL-6などのサイトカインと分離を試みている現状である。
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