研究概要 |
1.2名のHTLV-Iぶどう膜炎の患者から,眼の前房水,硝子体液および末梢血を採取し,その中の単核球を,96穴の丸底のマイクロプレートに1cell/wellの割合で蒔き,PHA,IL-2,および放射線照射したヒト末梢血単核球をfeeder cellsとして使用して,クローン化T細胞を増殖させた。 2.細胞を24穴のプレートでさらに増殖させ,HTLV-Itax geneのプライマーを用いたPCR法でHTLV-Iのproviral DNAの有無を調べたところ,眼由来のクローン化T細胞94種類のうち55種類(59%)が陽性であった。また,末梢血由来のクローン化T細胞36種類のうち13種類(36%)も陽性であった。さらにHTLV-I関連蛋白をモノクローナル抗体を用いた蛍光抗体法によって調べると,同様に陽性であった。これらの陽性クローン化T細胞について,電顕でウイルス粒子の産生状態を解析すると,C型ウイルスが観察された。これらの結果より,HTLV-Iぶどう膜炎の患者の眼炎症局所の湿潤リンパ球,および末梢血単核球に,高率にHTLV-Iが感染していることが確認された。 3.クローン化T細胞の膜マーカーは,多数がCD3+CD4+CD8-であり,CD3+CD4-CD8+のクローンも少数認められた。 4.クローン化T細胞について、培養上清中のサイトカイン産生量を測定したが、HTLV-Iが感染したクローン化T細胞はIL-6,TNF-aをはじめとする多種類の炎症性サイトカインを多量に自然産生していることが確認された。 以上の結果より,眼炎症局所に湿潤しているHTLV-I感染T細胞が産生するサイトカインが,HTLV-Iぶどう膜炎の発症に深く関与していることが強く示唆された。
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