研究概要 |
1.HTLV-Iぶどう膜炎の発症機構を解明する目的で、in vitroのモデル実験系で解析した。 2.まず、HTLV-Iぶどう膜炎の患者2名の前房水、および硝子体液より浸潤細胞を採取し、その中から94種類のクローン化T細胞(その内55種類がHTLV-Iに感染しており、ウイルス粒子,ウイルスDNA,ウイルス蛋白が陽性であった)を樹立した。また、末梢血より36種類(その内13種類がHTLV-Iに感染していた)のクローン化T細胞を樹立した。そして、これらのクローン化T細胞を培養・維持し、研究に用いた。 蛍光抗体法によって、クローン化T細胞の膜マーカーを調べたところ、ほとんどのクローン化T細胞はCD3およびCD4が陽性で、少数のクローン化T細胞がCD3およびCD8が陽性であった。B細胞およびマクロファージのクローン化細胞は認められなかった。 4.これらのクローン化T細胞のT細胞抗原レセプターを解析したところ、すべてのクローンで異なっており、眼炎症局所に浸潤しているT細胞はモノクローナルではなく、ポリクローナルであることが分かった。 5.HTLV-Iに感染しているクローン化T細胞の培養上清について、各種サイトカイン(IL-1α,IL-2,IL-3,IL-4,IL-6,IL-8,IL-10,TNF-α,IFN-_γ,GM-CSF)の産生量をELISA法で測定すると、IL-1α、IL-3,IL-6,IL-8,TNF-α,IFN-_γ,およびGM-CSFを大量に産生していた。また、少量ながら、IL-2,およびIL-10も産生していた。 6.以上の結果から、眼炎症局所にポリクローナルに浸潤したHTLV-I感染T細胞が産生分泌する炎症性のサイトカインが、HTLV-Iぶどう膜炎の発症機構に深く関与していると考えられた。
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