研究課題/領域番号 |
06670513
|
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
村田 有志 弘前大学, 医学部・附属病院, 講師 (70174307)
|
研究分担者 |
芳賀 陽一 弘前大学, 医学部, 助手 (20261448)
田中 正則 弘前大学, 医学部, 講師 (10241473)
棟方 昭博 弘前大学, 医学部, 助教授 (50003661)
|
キーワード | ラット大腸炎 / 炎症性サイトカイン / 潰瘍性大腸炎 / 病理組織像 / MHC-classII発現 / アポトーシス |
研究概要 |
【背景と目的】本研究者らは、潰瘍性大腸炎(UC)の大腸病変部での炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、IL-8、TNF-α)産生亢進を明らかにしてきた。平成6年度の本研究では、ラット大腸粘膜に各炎症性サイトカインを注入し、その組織学的変化を検討し、IL-1βでは粘膜下血腫のみを、TNF-αではUCとやや異なる強い粘膜傷害を、IL-8では好中球浸潤を伴う上皮剥離、腺管のねじれ、杯細胞減少など急性期UCに近い像を、IL-6では半数でIL-8と同様の上皮の変化とリンパ球浸潤を認めた。すなわち、各炎症性サイトカインの中で、IL-8がUCの病態に最も深く関与している可能性を明らかにした。UCの病変部ではMHC-classII抗原を発現している細胞の増加や、最近では陰窩上皮のアポトーシスが報告されている。そこで平成7年度の本研究では、エタノール注入によるラット大腸も加え、classII抗原発現とアポトーシスに関する炎症性サイトカインの影響を検討した。【方法】前年度の如く、ラット大腸粘膜に30%エタノール溶液を注入し、その組織学的変化をみた。エタノールや炎症性サイトカインによる病変部大腸におけるclassII抗原の同定を、マウスモノクローナル抗体を用いた酵素抗体間接法で行った。アポトーシス細胞の同定を、10%ホルマリン固定、パラフィン包理、4〜6μmの切片作製、脱パラを経てからTUNEL法で行った。【結果】エタノールでは4例全例で上皮剥離を、2例で好酸球とリンパ球の浸潤を認めた。classII抗原陽性細胞はIL-6注入大腸で増加し、IL-8やTNF-α注入大腸で著増したが、IL-1βでは少なく、エタノールではごく少数であった。各炎症性サイトカインやエタノール注入のいずれの大腸病変部でも、陰窩上皮や粘膜固有層においてアポトーシス細胞はわずかに認められるのみであった。【考察と結論】IL-8とTNF-α、次いでIL-6がclassII抗原の誘導に深く関与していること、また各炎症性サイトカインやエタノールによる大腸粘膜傷害にはアポトーシスの関与は少ないことが示唆された。
|