研究分担者 |
森泉 茂樹 東北大学, 医学部附属病院, 医員
納谷 耕司 東北大学, 医学部, 助手
下瀬川 徹 東北大学, 医学部附属病院, 助手 (90226275)
NAYA K Tohoku Univ., School of Medicine, Assistant Professor
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研究概要 |
慢性膵炎の発病への素因,発生機序の解明を目的として,遺伝的な因子の関与が考えられる家族性慢性膵炎を対象に検討した. 1.文献,アンケート調査により,慢性膵炎が1家系内3例以上発症した20家系74例を集計しその臨床像を分析した.遺伝性慢性膵炎の一般的な基準,2世代以上3例以上を満足するのは17家系64例であり,多くは若年発症であった.教室例でも二卵性双生児,石灰化兄弟例など2例に留まる家系も多く,小子化が進む日本では新たな基準が必要であり,今回の検討より10歳代での発症で2世代にわたれば,2例でも遺伝性慢性膵炎とすることは適当と考えられた. 2.膵の急性炎症を引き起こす素因,炎症が持続し慢性炎症,線維化を生じる因子のうち膵炎発生に関する防御系因子を検討した.8例の発症者を認めたビック家系で膵石灰化例の父親,非石灰化例の長男,非発症者の長女および健常者,別家系の二卵性双生児の中年者で膵石灰化まで経過を追えた例を検討した.膵に特異的に関連する蛋白,pancreatic secretory trypsin inhibitor ; PSTI, regenerating gene Iβの遺伝子変異の有無,これら遺伝子をマーカーとしたサザンブロック法によるRFLP解析を行った.末梢リンパ球より抽出したRNAからcDNAを合成,ゲノムDNAでヒトPSTI,ヒトregIβ遺伝子の変異の有無をPCR法により当該遺伝子のコード域を増幅し,塩基配列を決定することによる解析を進めた.PSTIでは1塩基のみのsilent mutationを見いだした.また標準的な制限酵素で消化したあとcDNAプローブとhybridizeするDNA断片の長さに差を認めなかった.このように現時点では検討した遺伝子および検索例では有意な異常を発見できていない.
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