研究概要 |
肝癌に対する放射線治療の中で、最近注目されている陽子線は、体内で高線量或(ブラ-グピーク)を形成する性質有しているため、周辺肝組織にはあまり障害を与えることなく癌病巣のみを集中的に狙い撃ちすることが可能である。陽子線は病巣の選択的照射を可能にするので、とくに肝硬変合併肝細胞癌等には今後最適な治療法となりうる可能性がある。そこで本研究ではまず、肝癌に対する陽子線の臨床的検討を行うことにより、集学的治療が必要である肝癌の治療法の一つとしての本治療法の適応基準、理想的な照射法などを検討し、本法の臨床的有用性の確立を目的とした。対象は1988年1月より1992年10月までに陽子線治療を施行した34例,44病変である。1回線量3〜4Gyで60〜87Gy(平均74Gy)という従来の放射線療法に比べはるかに高線量の照射が可能であった。その結果,腫瘍径の縮小率は、1年後:陽子線単独群24/25(96%),l-TAI併用群13/13(100%);4年後:併用群4/4(100%)であった。観察期間中の局所制御率は,1年目:38病変中37例97%,4年目:4/4(100%)という良好な成績を得ることができた.また重篤な副作用の出現も認めなかった。L-TAI単独群に比し陽子線単独群,併用群ともに観察期間中有意に局所制御率は良好であった。また,経過観察中に陽子線治療が加わった群の5生率は,80%,l-TAI単独群は40%と陽子線治療が加わった群は,l-TAI単独治療群に比べ有意に良好な生存率が得られた。陽子線療法は,今後肝癌の安全かつ有効な新しい集学的治療選択法となりうると考えられた。
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