我々はSSCP法を用いてC型肝炎のinterferon(IFN)治療における宿主内のHCV populationの変動を分析し、個々のquasispeciesのIFN感受性の相違を明らかとしてきた。そこで、IFNによりHCV quasispeciesの選択の起こった症例について、個々のquasispeciesがIFNに対して異なる感受性を示す機序を検討するため、IFN投与前および投与中のHCV遺伝子の相違を明らかとし、IFN感受性に関与するHCV遺伝子領域を検索した。 3例のIFNが無効であったC型肝炎患者(genotype 1b)の血清よりRNAを抽出、RT-PCR法によりHCVの全遺伝子を増幅し、治療前および治療中のHCVの全遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を決定、比較しIFNにより消失したHCVと残存したHCVのアミノ酸配列の相違を明らかとした。 3例のIFN無効例において、IFN投与により一部のHCV quasispeciesが選択され、HCVのIFNに対する感受性はquasipeciesにより異なっていた。IFNにより治療前に検出された2種類のHCVの一方が速やかに検出されなくなった症例での治療前後のHCVの構造の相違はE2領域、NS2領域およびNS5A領域にほぼ限局していた。一方、IFN投与中に緩徐にIFN resistant HCVの選択された他の2症例ではアミノ酸の相違はE2領域および非構造蛋白領域全体に散在してして認められた。3症例を比較すると治療前後のHCVの相違はNS5Aの限局した領域に変異が集積していた。 同一時期に同一宿主内に存在した2種類のHCVのIFNに対する感受性の相違は宿主側の要因が関与は少ないと考えられ、HCV遺伝子自体の相違が原因となっていると考えられる。したがって、今回相違が明らかとなったHCV遺伝子領域がHCVのIFN感受性に関与していると考えられる。現在、この領域のアミノ酸変異とIFN治療効果の関連を検討中である。
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