我々はSSCP法を用いてC型肝炎のinterferon(IFN)治療における宿主内のHCVpopulationの変動を分析し、個々のquasispeciesのIFN感受性の相違を明らかとしてきた。そこで、IFNによりHCVquasispeciesの選択の起こった症例について、個々のquasispeciesがIFNに対して異なる感受性を示す機序を検討するため、IFN投与前および投与中のHCV遺伝子の相違を明らかとし、IFN感受性に関与するHCV遺伝子領域を検索した。 平成6年度は、3例のIFNが無効であったC型肝炎患者(genotypelb)の血清よりRNAを抽出、RT-PCR法によりHCVの全遺伝子を増幅し、治療前および治療中のHCVの全遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を決定、比較しIFNにより消失したHCVと残存したHCVのアミノ酸配列の相違を明らかとした。その結果、3症例を比較すると治療前後のHCVの相違はNS5Aの限局した領域に変異が集積していた。同一時期に同一宿主内に存在した2種類のHCVのIFNに対する感受性の相違は宿主側の要因の関与は少ないと考えられ、HCV遺伝子自体の相違が原因となっていると考えられる。したがって、今回相違が明らかとなったHCV遺伝子領域がHCVのIFN感受性に関与していると考えられる。 平成7年度は、この領域のアミノ酸変異とIFN治療効果の関連を検討した。その結果、IFN治療前のこの領域のアミノ酸変異とIFN治療効果との間に有意の相関を認めた。すなわち、この領域に異変を持たないHCVを治療前に検出した症例ではIFNは無効であったのに対して、この領域に多数の変異を持ったHCVを治療前に検出した症例は前例が著効となった。更にこの領域はHCV-RNA量とも関連しており、変異が増加するにしたがってHCV-RNA量が低下することも明らかとなった。
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