超音波内視鏡(EUS)と膵液の遺伝子診断を組み合わせた一連の内視鏡下の検査が、膵癌の効率的な診断法としていかに有用であるかを明らかにしようとした。対象は、腹痛などの自覚症状、検診でのチェック、膵酵素や腫瘍マーカーの上昇、糖尿病の悪化などより膵の異常が疑われる患者であり、EUSにより膵の一次スクリーニングを行った。腫癌や膵管拡張などの異常エコーが検出された場合、内視鏡下に純膵液を採取し、ASOプローブ法ないしはPCR-RFLP法によりK-rasコドン12の点突然変異を検索した。その結果、(1).腫瘍径1〜2cmの小膵癌は、EUSで辺縁不整な類円形の低エコー腫癌として描出された。内部エコーも約半数で不均一であったが、大きな癌に比べ軽微なため、周囲との境界は比較的明瞭であった。(2).主膵管は、腫瘍部尾側で急激に拡張した。拡張形態は数珠状で、その腫瘍部断端は、凹凸不整を示した。(3).炎症性膵腫瘤は、一般に角ばった低エコー域として描出され、膵管の走行や径に影響を与えないことが多いが、腫瘤径が1cm以下で、円形の場合には、小膵癌と鑑別できないものも存在した。(4).PCR-RFLP法による膵液中K-rasコドン12点突然変異の検出率は、膵管癌78%(29/37)、粘液産生膵腫瘍(腺腫)50%(2/4)、慢性膵炎9%(5/53)であった。K-ras変異の陽性率と、腫瘍占拠部位や腫瘍径との間に一定の関連性はなく、小膵癌でも6例中4例が陽性であった。以上の成績より、膵液中のK-rasコドン12点突然変異やp53の変異検索は、EUSにて検出された小腫瘍性病変の質的診断に有用であり、これら内視鏡を応用した一連の検査は、膵癌の効率的な早期診断法として大いに期待される。
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