カテプシンEはペプシノーゲンA、ペプシノーゲンC、カテプシンD、レニンと同じく酸性プロテアーゼの一つであり、1)細胞内プロテアーゼである、2)カテプシンDと異なりライソゾームには存在しない、3)胃粘膜皮蓋上皮細胞に最も多く存在する、4)胃以外に膵臓、胸腺、リンパ節、などの免疫系組織に存在する、という特徴を持つ。カテプシンEの生理機能は、細胞内プロテアーゼであり胃以外に免疫系組織に主に存在することから、免疫機構、特に抗原形成に関与していると考えられているが、いまだ不明であった。カテプシンEと病態との関連を免疫組織化学的に解析したところ、カテプシンEが膵管細胞癌の100%(15例)に発現していることが認められた。正常膵では免疫組織化学的、酵素学的にも検出されず、膵臓でのカテプシンEの発現は癌特異的であった。我々はこれまでに、カテプシンEが膵癌マーカーとなりうるかを検討するため、組み換えヒトカテプシンEを用い作成したポリクローナル抗体とモノクローナル抗体を用い、enzyme immunosorbent assay(ELISA)を確立し、膵癌患者の血清、尿、膵癌患者の血清、尿、膵液中のカテプシンEを測定したところ、血清中にはカテプシンEは認められなかったが、尿中と膵液中に認められ、特に膵液中のカテプシンEは膵癌の75%と高率に認められ、膵癌マーカーとして有効と考えられた。膵液中のカテプシンEはCA19-9よりも特異度は高く膵癌と慢性膵炎との鑑別診断に有効であった。しかし、カテプシンEは膵腺腫や過形成でも免疫組織化学的に発現がみられ、膵液中にも腺腫でカテプシンEの検出される例が50%に認められ、カテプシンEの発現は膵癌発生の比較的早期に関係すると考えられた。
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