研究概要 |
1.重症肝炎患者における代謝動態 重症肝炎(劇症肝炎、急性肝炎重症型)、健常者を対象として、10%ブドウ糖液を輸液および分枝鎖アミノ酸(BCAA)を多く含むFischer液(F液)500mlを輸液した際の代謝動態について間接カロリーメータを用いて検討した。 重症肝炎患者のエネルギー代謝は健常者に比し亢進していた。急性肝炎重症型(全例生存)では、F液投与後の蛋白燃焼量は有意に増加、すなわち投与されたBCAAはエネルギー源として利用されていた。一方劇症肝炎においては、中等度代謝亢進群(生存率75%)ではF液投与後に蛋白燃焼量は有意に増加したが、著明な代謝亢進群(生存率0%)では有意な変動は認められなかった。従って重症肝炎患者の栄養管理を行なっていく上では、間接カロリーメータを用いた代謝動態の評価が不可欠であると考えられた。 2.急性肝不全モデルにおける代謝動態 急性肝不全(AHF)ラットを用い、^<14>Cで標識したleucine (Leu)を定速静注することによりBCAAの代謝動態について検討した。 AHFラットでは対照群に比してLeuのbreakdownおよびoxidationはいずれも有意に亢進しており、蛋白異化亢進状態が存在した。このモデルに標準のF液(総窒素量12.2g/L, F比37.05)を投与すると、Leuのoxidationは有意に増加していることから、投与されたBCAAは代謝されているものと考えられた。さらにBCAAを豊富に含む輸液(総窒素量21.9g/L, F比148.2)およびactive placebo輸液(総窒素量21.9g/L, F比37.05)投与後の代謝動態についても検討すると、BCAAを豊富に含む輸液ではsynthesisの増加(protein-sparing effect)が観察された。しかしながら急性肝不全において亢進しているbreak downの抑制作用は、いずれの輸液においても認められなかった。
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