研究概要 |
肝線維化に関与する伊東細胞は、障害肝においてレチノイドを失いコラーゲンを大量に産生する細胞へと形質転換する事が知られている。我々は、この形質転換の過程で新規レチノイン酸である9, 13-di-cis-レチノイン酸(dcRA)が増加する事を発見した。dcRAは転写活性を有し、伊東細胞において、プラスミノゲンアクティベータ(PA)を誘導し、プラスミンを活性化させて、transforming growth factor (TGF) -βを活性化させることを明らかにした。TGF-βは、伊東細胞自身を刺激し、コラーゲン合成を亢進させる。この際、dcRAはレチノイド核レセプターの一つであるretinoic acid receptor (RAR) αを介して、この一連の誘導を行う事も明らかにした。 従ってRAR αとdcRAの結合を阻害しするレチノイドアンタゴニストは、TGF-βの活性化を抑制し、肝線維化の治療薬となり得る可能性を秘めている。我々は、RAR α選択的なアンタゴニストや、RAR αβγ全てを阻害するpanアンタゴニストを用いた研究を行いない有望な化合物を得ることが出来た。
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