competitive PCR法を応用し、異粘液内、及び胃粘膜中のHelicobacter pylori (H.pylori) を定量的に検出する方法を確立した。同時に胃液のpH、アンモニア、及び尿素濃度を測定し、またウレアーゼテストとH.pyloriの培養を行った。胃粘膜内のH.pyloriの定量法によって胃潰瘍、十二指腸潰瘍ではH.pyloriの異内分布が異なり両疾患の病態の違いにH.pyloriの異内分布の違いが関与している可能性が示唆された。また、H.pyloriの除菌を併用した潰瘍治療を行い、上述の検査に加え、血清pepsinogen、及びgastrinの変化を検討した。プロトンポンプインヒビターの一つであるlansoprazoleには、常用量ではH.pyloriのウレアーゼ活性を抑制するものの、H.pyloriの除菌はできないことが明らかになった。lansoprazoleにAMPCを併用すると60〜70%の症例でH.pyloriの除菌が見られ、残りの症例でもほとんどでH.pyloriの菌数の低下が見られることがわかった。H.pyloriが除菌された症例では血清pepsinogen IIは有意に低下し、pepsinogenI/IIは有意に増加し、その変化率を検討するとそれは除菌の指標の一つになりうることが明らかになった。また、胃液のpHの検討では、胃潰瘍症例ではH.pyloriが除菌されると胃液酸度が低酸状態から正酸に回復することが明らかになった。今後は、胃粘膜中のプロトンポンプ、ソマトスタチン、ガストリンのmRNAの検討をH.pyloriの除菌前後で行い、H.pylori感染の特に胃酸分泌に関わる影響について検討する予定である。また、内視鏡検査後のAGMLの発症にH.pylori感染の可能性があることにより、内視鏡検査後のファイバースコープの洗浄方法と遺残菌数についても検討中である。
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