研究概要 |
(1)クローン病患者末梢血リンパ球長期培養およびSCIDマウスへの移入実験:昨年我々は、クローン病患者の腸粘膜では、病変部・非病変部を問はずVβ2,12,13T細胞が高率に発現していることを明らかにした。これらの偏りは、同じ患者の末梢血リンパ球には認められなかったことより、腸粘膜での偏りは、何らかの腸管抗原の認識によって起こっているものと考えた。現時点で患者を対象として抗原を特定することは難しいため、これらの偏りを持つT細胞をSCIDマウスに移入して、クローン病のモデルを作成することを試みた。まず、患者末梢血リンパ球を抗原提示細胞と、同じ患者の腸粘膜抽出物で繰り返し刺激しT細胞のレパトア検討した。解析に用いた2例中1例では、腸粘膜と類似したVβ,12,13の増加を認め、残りの1例とともにSCIDマウスの腹腔内へ注入した。同マウスの解析は現在進行中であるが、さらに症例を追加中である。 (2)T細胞レセプター遺伝子のclonalityの検討:クローン病腸粘膜で増加しているVβ2,12,13ファミリーT細胞中で実際増加しているT細胞cloneを同定することで、抗体治療等のより特異的な治療が可能となるため、前回解析に用いた各々の症例でPCR-SSCP法によるclonalityの検討を行った。腸管が常に外来抗原にさらされているという特異的な場所であるためか、正常コントロール群でもoligoclonalであったが、クローン病腸粘膜では、Vβ2,12でより限定されたcloneの増加が認められ、何らかの抗原に対して数種の特定のcloneが増加していることが示唆された。SSCPでの検討では、Vβ13について大差は認められなかったが、現在oligoclonalとして得られたcloneについて超可変部の塩基配列を決定中である。
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