本年度は、tissue inhibitor of metalloproteinases(TIMP)-1の肝線維化病態での意義を明らかにする目的で、慢性肝疾患での肝組織中のTIMP-1量を測定した。 肝生検を受けた68例(正常肝/脂肪肝10例、慢性持続性肝炎(CPH)18例、慢性活動性肝炎(CAH)2A24例、CAH2B10例、肝硬変(LC)6例)を対象とし、肝組織中のTIMP-1をDeanらの方法により2Mグアニジンで抽出後、TIMP-1EIAキットを用いて肝TIMP-1量を測定した。 肝TIMP-1量は対照群で19.2±8.3ng/mg蛋白であり、CPH群では21.9±7.4ng/mg蛋白と変わらなかった。これに対して、CAH2A群では42.4±11.8ng/mg蛋白、CAH2B群では55.6±20.4ng/mg蛋白、LC群では78.9±5.4ng/mg蛋白と対照群、CPH群に比べて有意に増加していた。LC群での肝TIMP-1量は、CAH2A、CAH2Bに対しても有意に高値であった。肝TIMP-1量と肝組織所見を比較検討すると、小葉内変性壊死との関連は少なかったが、門脈周囲壊死、門脈域炎症、肝線維化の程度と密接に関連しており、肝TIMP-1が病変肝での壊死炎症および線維化の進行とともに上昇することが示された。 したがって、慢性活動性肝疾患では肝組織でのTIMP-1の生成分泌が増加し、これら病変ではmatrix metalloproteinase活性が抑制され、細胞外マトリックスの分解が障害され、線維肝へと進展することが示唆された。
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