【目的】ビトロネクチン分子のコンフォメーション変化によるコラーゲン結合活性の増強が、肝線維化成立にどのように関わるかを解明する目的で研究を行なった。本年度の実施計画はビトロネクチン、コラーゲン結合型ビトロネクチンを慢性肝疾患の肝組織中、血漿中で定量する事である。 【方法】慢性非活動性肝炎、慢性活動性肝炎、肝硬変、肝硬変合併肝細胞癌を対象とした。肝組織中、血漿中ビトロネクチン、コラーゲン結合型ビトロネクチンは平成6年度に確立した酵素免疫測定法で行なった。肝組織はリン酸緩衝液でホモジネートし、ブロッキング液で希釈しサンプルとした。 【結果】健康成人におけるコラーゲン結合型ビトロネクチンの血漿濃度は平均で5.6±1.9μg/ml程度であり、慢性非活動性肝炎、慢性活動性肝炎、肝硬変、肝硬変合併肝細胞癌では平均8.3±1.1、8.3±2.9、7.8±2.9、8.2±2.1μg/mlであった。総ビトロネクチンに対するコラーゲン結合型の割合は健康成人で2.2±0.8%であり病態の進行に伴なって有意に割合が増加した。肝組織中のビトロネクチンは慢性肝炎0.41±0.12、肝硬変0.42±0.18μg/mg肝蛋白であり、正常肝の2.4倍程度に増加していた。 【まとめ】慢性肝疾患では血漿ビトロネクチン濃度は病態の進行に従って減少するにもかかわらず、肝組織中のビトロネクチンは増加し、血漿中ではコラーゲン結合型ビトロネクチンも増加する結果が得られ、本年度の目的はほぼ達成した。肝組織ではビトロネクチンがコラーゲン線維に添って染色される成績も得られ、ビトロネクチンが線維増生にかかわっている可能性が推定された。
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