【目的】ビトロネクチン分子のコンフォメーション変化によるコラーゲン結合活性の増強が、肝線維化成立にどのように関わるかを解明する目的で研究を行なった。具体的にはコラーゲン結合型ビトロネクチンの酵素免疫測定法を確立し、慢性肝疾患の肝組織中、血漿中で定量した。 【方法】酵素免疫測定法はI型コラーゲンを固層しサンプル添加、HRP標識抗ビトロネクチン抗体を加えB/F分離後固層に結合したHRPを定量しコラーゲン結合型ビトロネクチンとした。慢性非活動性肝炎、慢性活動性肝炎肝硬変、肝細胞癌を対象とし肝組織、血漿ビトロネクチン、コラーゲン結合型ビトロネクチンを定量した。 【結果】コラーゲン結合型ビトロネクチンの酵素免疫測定法では2μg/mlまで直線性を示した。健康成人の血漿コラーゲン結合型ビトロネクチンは平均で5.6±1.9μg/ml程度であり、慢性非活動性肝炎、慢性活動性肝炎肝硬変、肝硬変合併肝細胞癌では平均8.3±1.1、8.3±2.9、7.8±2.9、8.2±2.1μg/mlであった。総ビトロネクチンに対するコラーゲン結合型の割合は健康成人で2.2±0.8%であり病態の進行に伴なって有意に割合が増加した。肝組織中ビトロネクチンは慢性肝炎0.41±0.12、肝硬変0.42±0.18μg/mg肝蛋白であり、正常肝の2.4倍程度に増加していた。 【まとめ】コラーゲン結合型ビトロネクチンの酵素免疫測定法を確立した。慢性肝疾患では血漿ビトロネクチン濃度は病態の進行に従って減少するにもかかわらず、肝組織中のビトロネクチンは増加し、血漿中ではコラーゲン結合型ビトロネクチンも増加する結果が得られた。肝組織ではビトロネクチンがコラーゲン線維に添って染色される成績も得られ、ビトロネクチンが線維増生にかかわっている可能性が推定された。
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