研究概要 |
B型およびC型慢性肝炎患者112例を平均70ヶ月間にわたって経過観察で、C型慢性肝炎患者より肝細胞癌の年発癌率はCPHで0.47%、CAH2Aで1.6%、CAH2Bで3.1%と慢性肝炎の進展とともに頻度が高くなっている。Retrospectve studyで106例の肝硬変(LC)が6年間に37.5%の頻度で肝細胞癌(HCC)へとなり、HCV、HBV関与のLC症例の43%、ウイルス性LCの23%がHCCへと移行した。1989年以降に肝硬変と診断されたC型肝硬変65例より平均33.2ヶ月の追跡期間中に12例(年間発癌率6.7%)、肝癌の発症までの期間は10-46ヶ月平均24.4ヶ月であった。またはB型肝硬変26例中細胞癌を合併したものは3年で2例、5年で4例であった。組織学的に診断を確定し得た早期HCC3例と進行HCC26例および同一患者の非癌部より全DNAを抽出してPCR-SSCR法によってP53遺伝子のエキソン4,5-6,7,8-9に存在する変異を検出した。同一材料を用いてgenetic8種のfragmentをproveとしてRFLP法によりヘテロ接合体の消失(LOH)の有無を検討した。26例の進行癌DNAに対する下記のproveの陽性率はそれぞれのproveにつきLOH陽率を示すとYNZ22(17q)50%,CHC5.61(5q)42%,dCI-273(11q)41%,CBHP(17p)、41%MCT35.1(17q)34%などであった。P53の変異は26例中7例826.9%)に検出され,変異の部位はエキソン5-6,7に集中した。一方3例の早期HCCではRFLP法による検出率は進行HCCに比較して低率であり,P53遺伝子の異常は認めなかった。他方,肝内転移を有する進行HCC2例の5個の肝内娘結節にP53遺伝子の変異を認めた。早期HCCでCHC5.61が3例中1例に陽性となった。早期HCCは進行HCCに比較してRFLP法によるヘテロ接合体の消失率が少なく,且つP53遺伝子の変異が認められないことは肝細胞癌の多段階発癌と進展を示唆している。ついで,RLGS法(Restriction Landmark Genomic Scanning)により解析した。原発性肝癌11症例につき癌部,非癌部でのパターンを比較,検討した。癌部における増幅やLOH等多用な変化を反映するDNA断片を検出した。多結節性のHCCにおいてはスッポトのパターンの比較から肝内転移と多発癌との識別が用意に可能であった。多発癌の各結節や,被胞型HCCで多様構造を示すものでは各部位でそれぞれいくつかの異なるスポットの変化がみられた。遠隔転移を示したHCCにおいては,転移部位において原発巣とは異なるスポットの変化が観察された。癌部において共通して変化の認められるスポットに対応するDNA断片がヒト肝細胞の癌化と深い関連がある可能性が示唆された。さらにAP-PCR-SSCP法によっても広範なDNA異常検索を行い、癌部特異的な変化を検出した。
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