肝線維化対策の為に、肝線維化過程における可溶性コラーゲン、I型・III型コラーゲン(proα_1(I)・proα_1(III)、コラゲナーゼ(MMP-1)、コラゲナーゼインヒビター(TIMP-1)の活性動態をジメチルニトロサミン(DMN)線維肝ラットモデルおよび肝細胞spheroidを用いて検討した。その結果、これまでに次のような知見を得た。 1.ラットにDMNを単回投与して、3日後には血清GPTが頂値を示すと共に肝線維化が出現した。血清GPTは9日後に前値に復したが、肝線維化は約4カ月にわたって存続した。 2.DMN投与2週間後に門脈域を中心にコラーゲン線維の増生した線維肝が、DMN用量依存性に認められた。 3.肝組織中のコラーゲンをホモジナイザー・凍結-融解・ソニケイタ-の3段階操作で可溶化し、短時間で直接定量することができた。 4.DMN投与14日後まで用量依存性に肝コラーゲン量が増加し、以後高値が持続した。 5.肝β-アクチンの遺伝子発現強度を内部標準としてmRNA発現を半定量化すると、proα_1(I)の遺伝子発現はDMN用量依存性に増加傾向を示したが、proα_1(III)、MMP-1およびTIMP-1では低用量で頂値を示した。 これらの研究成果から、明らかな線維肝の出現前より、コラーゲン代謝に関与するmRNA発現を認め、コラーゲン産生を直接定量化することができ、肝線維化の良い指標に成り得ることが明らかになった。そして、コラーゲンの種類および合成系と分解系の違いによる発現時間の解離の可能性も示唆された。なお、単離障害肝細胞のintegrityが悪く、未だ障害肝細胞spheroidの確立に至らず、さらなる検討が必要である。
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