(1)C型肝炎ウイルスの全アミノ酸配列のエピトープ検索用コンピュータープログラムによる解析で、α-ヘリックスやβ-シート構造を取る免疫原性の高い部位を抽出した結果、コアの前半に3つの高いα-ヘリックスインデックスを示す領域、後半部に広範にα、βとも高いインデックスを示す領域を検出し、これをカバーするようにコアの75%をカバーする11のエピトープペプチドを選出した。Env、NS領域、特に超可変領域、NS5領域についてコアと同様に32のエピトープペプチドを選出した。 (2)(1)に基づき、10〜20アミノ酸残基よりなる約43個のペプチドをt-Boc法により合成し、C18 Sep-Pakカラム、HPLCによって精製した。さらにペプタイドの量をUVモニターで検量し、一部はアミノ酸分析を行った。 (3)C型肝炎ウイルスのうち、コア、Env、NS1をcodeする遺伝子NS5をcodeする遺伝子のvaccinia virusへの組み込みを行った。 (4)C型肝炎患者末梢血リンパ球を用い、(2)で合成したペプチド特異的cytotoxic T細胞(CTL)エピトープのスクリーニングを行い、コア由来11個のペプチドのうち1個の9-merペプチドがCD8+ CTLエピトープとなっていることを発見した。このエピトープは、HLA-A2により抗原提示されており、同エピトープ特異的CTLは(3)で作製したHCV蛋白発現vaccinia virusの感染したHLA-A2陽性細胞も特異的に障害することを確認した。 (5)HLA-A2.1陽性者でC型肝炎ウイルス(HCV)特異的キラーT細胞をin vivoで誘導することが可能か否かを解明することを目的として、ヒトHLA-A2.1遺伝子のトランスジェニックマウスを用い、HCV特異的キラーT細胞の誘導を試みた。ヒトHLA-A2.1遺伝子のトランスジェニックマウスではA2.1拘束性の4つのHCVペプチドに対し、T細胞レセプターを構築し、特異的CD8+キラーT細胞をin vivoで誘導可能であり、同マウスが、HCVへのヒト免疫応答の解析、ワクチン開発への応用に有用であることが解明された。また、HLA-A2陽性患者由来のヒト.キラーT細胞も同じエピトープに対しほぼ同様の反応性を示していた。本研究は、ワクシニアウイルスベクターによるHCV特異的キラーT細胞誘導ワクチンを用い、HLA-A2陽性者でキラーT細胞誘導が可能であることを示唆した世界で初めての成績である。HLA-A2陽性者が日本人の50%を占めることから、本研究が有力なワクチン開発につながるものと思われる。
|