当研究室で確立した消化管の単離平滑筋細胞を用いた実験系にてatrial natriuretic peptide(ANP)がvasoactive intestinal peptide(VIP)のspecific receptorに結合し、nitric oxide産生、soluble guanylate cyclaseの細胞内情報伝達機構を介し大腸輪走平滑筋細胞を弛緩させることを明らかにした。またthyrotropin releasing hormone(TRH)が大腸輪走平滑筋細胞に対し直接弛緩作用を有し、その弛緩作用はadenyl cyclase阻害剤およびmembranous guanylate cyclase 阻害剤による影響を受けず、soluble guanylate cyclase阻害剤により用量依存性に有意に抑制されることより、TRHの弛緩作用機序にsoluble guanylate cyclaseが重要な役割を果たすことを明らかにした。またcorticotropin releasing hormone(CRH)も大腸輪走平滑筋細胞に対し直接弛緩作用を有するが、その弛緩作用はmembranous guanylate cyclase阻害剤およびsoluble guanylate cyclase阻害剤による影響を受けず、adenylate cyclase阻害剤およびcAMP dependent protein kinase阻害剤により用量依存性に有意に抑制されることを認め、CRHの弛緩作用機序はTRHの場合と異なり、adenylate cyclase、cAMP dependent protein kinase系の細胞内情報伝達機構を介することを明らかにした。更にCRHのBinding Assayを施行し、大腸輪走平滑筋細胞にCRHの受容体が存在することを証明した。過敏性腸症候群の病態生理に関し、cholecystokinin(CCK)に対する大腸平滑筋の過剰収縮反応が報告されているが、大腸平滑筋におけるCCK受容体subtypeの検討はこれまで報告されていない。CCK刺激による大腸輸走平滑筋細胞収縮効果がCCK_A受容体拮抗剤およびCCK_B受容体拮抗剤により同じ強さで有意に抑制される成績を得、CCKの大腸輪走平滑筋細胞収縮作用はCCK_AおよびCCK_B受容体の両方を介することが示唆された。
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