研究概要 |
今日まで,消化管粘膜においては、オルニチン脱炭酸酵素の活性は局所の刺激により調節されると考えられてきた。当研究は、小腸におけるオルニチン脱炭酸酵素活性の調節に中枢神経系が関与することを証明しようとするものである。本年度の実験結果で,(1)食事の開始に先だって上昇する十二指腸粘膜のオルニチン脱炭酸酵素活性の上昇は、迷走神経の離断によって認められなくなった。このことは,何らかの中枢神経からの刺激が迷走神経経由で十二指腸粘膜に伝えられ,その結果オルニチン脱炭酸酵素活性が上昇したことを示している。(2)2-deoxy-D-glucoseを第III脳室内に投与すると十二指腸粘膜内のオルニチン脱炭酸酵素活性が上昇した。オルニチン脱炭酸酵素活性の上昇は、他の部位の小腸や肝臓でも認められ,その上昇は迷走神経の離断によって抑制された。2-deoxy-D-glucose投与によって中枢を糖欠乏状態にすると外側視床下野の神経活動が高まることが知られており,今回の結果は末梢のオルニチン脱炭酸酵素活性の上昇に外側視床下野の関与を示唆するものである。 平成6年度に行った実験より,当初のほぼ予想通りの結果を得た。中枢神経からの刺激で,末梢組織のオルニチン脱炭酸酵素活性が上昇するという結果である。当初は,中枢のいろんな部位がオルニチン脱炭酸酵素活性の上昇に関与していると予想していたが、一番重要な働きをしているのは外側視床下野であることがほぼ明らかとなり,平成7年度の実験計画のうえで大きな示唆を与える結果であった。
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