研究概要 |
本研究は虚血が惹起するごく軽微な胃粘膜障害の発生・修復過程を^<51>Cr-EDTAクリアランス法を用い研究することを目的としたが,(1)実験動物の体温調節をコントローラーで自動化し,灌流液の回収をフラクションコレクターで行うことにより,^<51>Cr-EDTAクリアランスの測定能率化を実現した。すなわち,ラットを麻酔下に大腿動静脈を確保し直腸温をモニターしつつ,体温自動調節装置で37℃に保った。前胃より二重管を挿入し胃内腔を生食で灌流し,血中に^<51>Cr-EDTAを約100μCi投与後,胃灌流液を十分な流量が得られかつ死腔が少ないチューブを用いフランクションコレクターに接続し,5分毎5ml自動的に回収した。この改良のためより早く,より正確な^<51>Cr-EDTAクリアランスの測定が可能となった。(2)胃粘液は活性酸素の消去作用を有することがしられていたが,in,vivoでの作用は明らかでなかった。胃に限局する虚血のみにより惹起される微細粘膜障害を^<51>Cr-EDTAクリアランス法で定量するモデル(Am.J.Physiol.266:G2630270,1994に発表)で,胃粘液の役割をin vivoで検討した結果,胃粘液は微細虚血再灌流障害に対し防御的に働くことが示された(投稿中).(3)微細粘膜障害の迅速な修復(restitution)の速度は^<51>Cr-EDTAクリアランスが回復する時の曲線をコンピューターを用い解析した結果,比較的簡便に定量化できることを見いだした。(4)胃粘液は虚血による微小粘膜障害の発生には防御的に働くが,修復過程(restitution)にはあまり関与していないことが判明した。しかし,EGFがrestitutionに関与している抗ラットEGF抗体を用いて示す計画は,3T3細胞を用いたin vitroの実験の結果EGF抗体を投与するだけでは活性をブロックできず,抗原抗体複合物を除いてはじめて効果のあることが判明し,in vivoで血中の抗原抗体複合物を如何に除くかが大きな問題となり進展していない。(5)大腸,下部小腸の虚血性微小粘膜障害モデルの作成を試みた結果,胃とは異なり下部消化管の虚血は,補体系が関与する全身的ショックを誘発することが判明し,下部腸管の微小粘膜障害と管腔内毒素の進入との関係に興味が持たれた(本年度米国消化器病学会で発表予定)。
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